ホーム
教えよう - 授業づくりにおけるQ&A

教えよう

授業づくりにおけるQ&A

実際に、体育の授業で子どもたちにタグラグビーを教えてみると、いろいろな疑問も出てくると思います。そこでここでは、小学校の先生方からよく寄せられる代表的な質問をとり上げて、それに答えてみることにしましょう。

Q1.タグラグビーの授業をやってみたいのですが、学校にはまだ楕円球がありません。ドッジボールのような丸いボールを使ってやってもよいでしょうか?

A.丸いボールを使うのはさけてください。
 ラグビーというボールゲームには、ボールを抱えて走るという大きな特徴があります。楕円の形は、抱えて走るのに向いている形なのです。また、ボールを前に投げられないラグビーでは両手で横やななめ後ろにパスをしますが、楕円の形はこういった両手でのパスもしやすい形と言えます。
 丸いボールを使ったタグラグビーの授業では、タグをとられてパスをしようとする子どもが、とっさに遠くの味方にボールをバウンドさせてパスをするのを見ることがあります。しかしこれは、バスケットボールで使う技術であって、ラグビーのゲームには本来ありえない技術なのです。
 用具は、その種目で使う技術を規定します。ぜひ楕円球を使ってタグラグビーを教えてあげてください。

Q2.楕円の形のボールにもいろいろな種類があるのですが、どのようなボールを使うとよいでしょうか?

A.高学年は4号球、中学年は3号球という大きさのラグビーボールを使ってください。
 子どもたちが、両手でのていねいなパスを自然におこなうようになるためには、ある程度の大きさと重さのある楕円球が必要です。
 小さくてとても軽かったりスポンジボールのように柔らかすぎるボールは、子どもたちがつい片手でわしづかみにしてしまいがちです。片手でのパスは前に投げるのには向いていますが、タグラグビーで求められる横やななめ後ろにパスするには向いていない投げ方ですから、どうしてもミスが起こりやすくなります。
 子どもたちの動きを型にはめる必要はありませんが、ラグビーに特有の両手での左右へのパスを導く上でも、4号球や3号球のラグビーボールを使ってください。ボールの空気圧は少しだけゆるめにすると扱いやすくなりますが、抜きすぎるとわしづかみできるようになってしまうので気をつけてください。
 なお、低学年の鬼遊びでは、3号球以外にも1~2年生の子どもが扱いやすいもう少し小さくて軽い楕円の形のボールを使ってもよいと思います。

Q3.試合をするとき、人数は何人でやるのがよいでしょうか?

A.最初は4人で始め、上手になってきたらコートを少し広げて5人にするとよいです。
 タグラグビーでは、タグをとられたプレーヤーとタグをとったプレーヤーが一時的にゲームに参加できなくなります。したがって、1チームの人数が3人ではタグが起こったときに残りが二人になってゲームがうまく進まなくなるのです。
 また、上手になってきたら5人に増やしてもよいのですが、それ以上は人数を増やさないように注意しましょう。6人以上になると、チームの中でボールゲームが苦手な子にだんだんボールが回らなくなるからです。
 コートの広さは、子どもたちや校庭の状況に応じて工夫してほしいのですが、たては30~40mぐらい、横は20~30mぐらいが一般的です。1人人数を増やすときは、横幅を5mぐらい広げるとよいと思います。

Q4.前パス禁止(スローフォワード)のルールは難しいので、授業の最初は前へのパスを認めるルールでやってもよいでしょうか?

A.スローフォワードは最初から反則としてください。
 タグラグビーのゲームで前へのパスを認めてしまうと、タグをとって相手の前進をストップさせるという防御の意味が全くなくなってしまうのです。せっかくボールを抱えて走ってくる相手を追いかけていってタグをとっても、次のパスをさらに前へ投げられてしまうと、タグをとりにいくことはトライを防ぐ有効な手段にならないばかりか、ゴール前の防御が手薄になってしまうことにもなります。
 攻める側がボールを抱えて走り、守る側がタグをとることでそこまでの前進をいったんストップさせ、そして次のパスはボールを前に投げられないこと、これはタグラグビーの特性である陣とりを成立させるためのワンセットのルールなのです。

Q5.できるだけスローフォワードの反則が起こらないようにしたいのですが、どのように指導すればよいでしょうか?

A.最初はパスをするよりも、ボールを持ったら前に走ることを促してあげてください。
 タグラグビーは、ボールを手にした次にやることが走るだけでゲームに参加できるという特徴があります。そこを活かして、最初はパスのことは考えずに、ボールを持ったら相手のいないところを探しながら前へ走ることを強調してください。
 そして、逃げ回って逃げ回ってタグをとられたらパスをすればよいという、ランニング中心のゲームから始めることが、子どもたちにとってスローフォワードの起こりにくい、やさしいゲームにするポイントです。
 また、スローフォワードは前に投げてしまう子に責任があるというよりも、前へ投げたくなる位置に先回りしてしまう子に原因がある場合も多いようです。ボールを持っていないときは、ボールを持っている味方の「お尻が見える位置を走ろう」という合言葉を指導することも、スローフォワードをなくす上で有効です。

Q6.スローフォワードを最初から反則とするなら、ノックオンも最初から反則とするべきなのでしょうか?

A.単元の前半はノックオンは反則にしなくてよいです。
 ラグビーではボールを前に投げると反則(スローフォワード)になるのと同じく、パスをとりそこねてボールを前に落としても手でボールを前へ進めたと見なされてノックオンという反則となります。
 子どもたちは楕円のボールに慣れていない最初の頃はパスをとりそこねることも多いので、ノックオンを最初から反則としてしまうと、とくに苦手な子が失敗を恐れてパスを受けとりにいかなくなってしまうこともあります。
 そこで、ノックオンはボール扱いに慣れていない内は反則としないでやってください。前に落としてしまったボールは再び拾ってもよいですし、相手に拾われて逆襲されることもあるでしょう。
 ボール扱いに慣れてきてどの子もパスをとる姿が出てきたら、発展したルールとしてノックオンを加えていきましょう。また、相手のパスを手でたたき落とすようなプレーが出てきた場合も、ノックオンのルールを加えるとよいでしょう。

Q7.子どもたちにとってやや難しいオフサイドの反則は、どのように教えたらよいでしょうか?

A.タグ後の最初のパスはカットできない、というルールで教えてください。
 サッカーのオフサイドは攻める側に起こる反則ですが、タグラグビーのオフサイドは守る側に起こる反則です。したがって、オフサイドという言葉を知っているサッカーをやっているような子どもにも、理解がやや難しいかもしれません。
 そこでオフサイドという言葉をあえて使わないで、タグをとられたプレーヤーがおこなう最初のパスはカットできないというルールで、実質的にオフサイドのルールを教えることがよいと思います。
 授業ではそのルールでほぼ最後までゲームを楽しむことができるのですが、単元の後半になって、タグ後の最初のパスはカットしないけれど、そのパスを受ける人の近くまで近づいておいてパスを受けたとたんにタグをとる、といった待ち伏せのような行動が出てきたら、オフサイドのルールを厳格に教える時期だと思います。
 そのときは、タグが起きたら守る側はタグをとられたプレーヤーの真横に生まれるオフサイドラインまで下がってから次のプレーをするというルールにします。

Q8.子どもたちにとって初めてのボールゲームですが、審判を子どもたちにさせることはできるのでしょうか?

A.多くの学校で、子どもたちがタグラグビーの審判をして楽しんでいます。
 タグラグビーは多くの子どもたちにとって初めて知るボールゲームなので、最初は先生がルールを説明し、審判をすることが多いと思います。ただ、タグラグビーのルールはスローフォワードをはじめ、どれも子どもたちでジャッジできるものばかりですから、子どもたちに任せていくことを常に目指してください。
 小学校ではどのボールゲームの授業でも、子どもたち同士で審判をしたり、審判をとくに置かないでセルフジャッジでゲームを進めることもよく行われます。それは、体育の授業で育てようとしている人間とは、審判にとり締まられないとプレーができない人ではなく、審判などいなくてもフェアにプレーできる生涯スポーツの主体者だからです。タグラグビーでも目指す姿は同じです。
 他のボールゲームと同じく、タグラグビーでもセルフジャッジでゲームを進めていくことは十分に可能ですが、タグラグビーは全速力で走る場面が度々起こるので、自分がタッチラインをふんだり越えたりしたかどうかは自身で判断できないことがあります。タッチかどうかについては、周りの人からのコールに従うというきまりを加えておこなうと、よりうまくいく場合が多いようです。

※小学館「公式BOOK だれでもできるタグラグビー」編著・鈴木秀人より引用

前へ